以前、某百貨店に勤めていたときの話ですが、新卒で採用された新入社員は配属先がどこであれ、研修期間中は売り場に立たされます。派遣先は人事部に委ねられていたのですが、事もあろうか、私は婦人服飾部のショップ売り場に派遣される事になってしまいました。

 ショップ売り場とは、ブランドショップがひしめくゾーンで社員は殆どおらず、メーカーから派遣された販売員が数多く在籍する売り場です。案の定その売り場は、4人の管理者である男性社員、2名の会計担当の女性社員、以下約30名の販売員(殆ど女性)で構成されていました。研修派遣の当日、朝礼で私のことが紹介されました。私の目の前にはお洒落な自社ブランドの服を身にまとった面々。中でも私の目をひきつけたのは、細身で背の高い絵里ちゃんでした。身長170cmの私とほぼ同じ背丈で、白石美帆をシャープにした感じの22歳の女性。
 
 その時は、3ヶ月という研修期間の間に何か楽しい事があればいいなと、淡い期待を抱いたのですが・・現実は厳しいものでした。飲みに誘ってくるのは、絵里ちゃん以外の女性。たまに絵里ちゃんが飲み会に来ても、他の人の相手をしている間に絵里ちゃんが帰宅してしまうなど、売り場でたまに会話をしたり、休憩室で話したりすることはあったものの、深いコミュニケーションを取る機会も無く、あっという間に研修期間が終わってしまいました。ヘタレ確定・・

 研修から数ヶ月の間、本部に配属された私は、新入社員ということもあり仕事に没頭していました。そんなある日、私は絵里ちゃんが他の百貨店に異動する事を、売り場でお世話になった派遣さんから、駅でバッタリ会った時に聞いたのです。絵里ちゃんには何となく淡い憧れを抱いていたので、多少ショックを受けましたが、勤務先も離れているためどうしようもありません。私には諦めるしか方法がありませんでした。

 それから10日程経った金曜日の夜9時ごろ、残業中の私の携帯がなりました。電話にでてみると、売場研修でお世話になった主任からの電話でした。「○○君、まだ会社にいる?実は今、絵里ちゃんの送別会の最中なんだけど、絵里ちゃんが酔っ払っちゃって、何で○○君が来ないんだ!』って荒れてるんだよ。何とかこっちに来られないかな?」との事。

 当日は非常に忙しく、終電に間に合わない恐れがあったため、車で出勤していたほどです。絵里ちゃんの送別会に出たい・・。しかし仕事をここで終えると、明日の土曜日は、100%休日出勤になる・・。が、迷いは一瞬でした。

「すぐに伺います。」そう答えると、脱兎のごとく会社を後にしました。店に着くと、部屋を貸しきった送別会会場はかなり盛り上がっていました。なんせ殆どが女性でしたから。一番奥にいる絵里ちゃんは、私の姿を目にするなり「○○ー!遅いぞー!何処行ってたのー!!」明るく元気な性格でありながら、普段は落ち着いている絵里ちゃんがそう叫んだので、更にどっと場が盛り上がりました。