あれは俺がまだ27歳だった年の秋。 
急な人事異動で本社から江上栞さんという女性が課長として赴任して来た。彼女は38歳で田中美里似のスレンダー美人だったが、引き詰め髪に眼鏡といったいかにもお堅い印象で、仕事に対しても非常に厳しい性格で皆から恐れられた。 
当然栞さんは部署内でも孤立し、完全に浮いた存在になっていた。でも俺はそんな彼女に一目惚れしてしまい、休み時間に仕事以外の事でも頻繁に話し掛ける様にした。 
最初こそあまり相手にされなかったが、少しずつ心を開いてくれ段々と良好な関係を築いていった。 
そして半年が過ぎた頃、俺は意を決して栞さんに飲みの誘いをしてみた。 
「あのーすいません、課長って今日何か予定あります?」 
「ないけど、それが何か?」 
「もし宜しければ、俺と一緒に飲みに行きませんか?」 
「えっ⁉そんな事?いいわよ、園田くんの奢りなら行ってあげる」 
栞さんは何の躊躇いもなく了承してくれ、退社後に二人きりで居酒屋に飲みに行った。 
その日の栞さんはかなり上機嫌で、今まで会社では見た事のないフランクな一面を見れて、非常に新鮮な気分になったのを覚えている。 
話に花が咲き、しばらくしてふと時計を見てみると何と深夜0時を回っていた。 
「やべっ‼もう終電行っちゃってるよな・・・ああ、どうしよう」 
「よければ私の家に泊まる?ここから近いし」 
「良いんですか⁉」 
あまりに予想外過ぎる誘いに俺は思わず、大声を出して聞き返してしまった。酒が入っていたせいもあるのか、普段の栞さんからは絶対に考えられない様な台詞だった。 
「別に構わないわよ、大したおもてなしは出来ないけど、泊まってく?」 
「はい‼喜んで」 
こうして居酒屋を出た後、タクシーを呼んで走る事、数分。 
とある二階建ての簡素なアパートの前に着き、どうやらここが栞さんの自宅の様だった。 
栞さんの部屋は二階で階段を上がって一番奥にあり、室内も質素なワンルームの造りで、装飾品があまりなく女性らしさを感じなかった。 
「どうぞごゆっくりして下さい」 
冷蔵庫から取り出した缶ビールを飲みながら、俺に寛ぐ様に促してきた。 
「すいません、トイレ借りますよ」 
「ええ、どうぞご自由に」 
洋室を出てトイレへ向かう途中、玄関の横にある洗濯機が視界に入って来た。俺はその中身が気になり、見てみたいと思い部屋の方を確認する。 
栞さんのいる洋室のガラスドアは閉まっており、尚且つ彼女もこちらに背を向けており気付かれる心配は少ないと判断した。 
そして音を立てない様に蓋を開けて中を拝見したら、そこには艶やかな花柄刺繍をあしらった黒のTバックが入っていた。普段はお堅いイメージの栞さんからは、かけ離れたセクシーな下着に異常な興奮を感じた。 
これは恐らく、昨日栞さんが身に付けていたものだろうと推察され、俺はそのTバックをささっとポケットに入れ、再び気付かれない様に蓋を閉めた。